硫黄島報告

今日は新聞表紙に福島瑞穂社民党党首の署名拒否発言の記事がありました。
福島氏の発言は社民党の主張として十分理解できます。日本人には私たちの誇る憲法9条によりこの国は平和を維持してきたという理想(建前)があります。崇高な理念は武士道国日本人の誇りでもあるのです。
しかし、5月11日硫黄島での陸上模擬着艦訓練(FCLP)の意義の説明や訓練様子を見学し、現実は米軍駐留の抑止力が大きく機能していることを見せつけられました。

当日は米大使館主催の見学会で、防衛省、外務省の官僚と、周辺自治体の首長や関係者が招待されました。私は民主党の水戸まさし参議院議員の同行で海老名の相原市議とともに参加させていただきました。説明も英語でなされ技術的な質疑が交わされていました。

米国の第7艦隊が担当する地域には、軍事力世界上位の7カ国が存在します(米国、日本、韓国、ロシア、中国、インド、北朝鮮)。そして、米国の主要な7同盟国のうち5カ国が存在します。(日本、韓国、オーストラリア、タイ、フィリピン)この地域は世界貿易のおよそ90%が海上交通に依存していて、地域の安全にかかわる問題は経済に直結しています。米国は海軍力により米国にとって死活的な国益を保護すると共に、集団安全保障、地域の安定、信頼関係を強化することを目的としています。この地域の戦争の抑止は米国の重要なミッションであり、それは日米安全保障条約に基づき我が国の国益に直結する機能と言えるでしょう。

横須賀港を母港とする第五空母打撃軍は海外で常時前方展開する唯一空母打撃軍だそうです。この空母は米国本土を母港とする空母と比較して、紛争地域まで出動する場合航海日数が17日間短縮されます。
米軍将校説明によると、日米安全保障条約で課せられた使命を遂行する能力を保てるかどうかは艦隊と飛行機が必要なく連を維持できるかどうかにかかっているようです。そして、なぜ離着陸訓練が必要かというと、艦載機は空母の約200メートルの滑走路で70機以上の艦載機がある中限られた場所に着艦しなければなりません。その技術は体に叩き込む以外になく常に訓練していないとわずかなミスが大惨事に繋がることになります。

硫黄島では、厚木から飛来し滑走路を6〜8の機艦載機が立て続けにタッチアンドゴーを繰り返し訓練していました。厚木では騒音対策の為に、2機編成で飛行高度も1500フィートで行うそうですが、硫黄島では600フィートと厚木での約半分の高度で実施できるそうです。硫黄島での訓練環境は理想的であるが、厚木からの距離が海上飛行で約1190キロメートル、岩国からは1356キロメートル離れています。そのため緊急着陸用の滑走路が近くにないために常に危険が伴い米海軍規則に違反するということでした。そのため第7艦隊は米海軍司令部に硫黄島でのFCLP実施の特別許可を2年に一度申請しなければならないそうです。

米海軍は日本国政府と協議を重ねられるように期待し、恒常的訓練施設が一日も早く完成することを望んでいるとまとめられました。

国防機能を維持しつつも厚木基地に隣接する地域住民への騒音や安全対策は重要で、それを軽減するために日本国政府がしなければならないことは明確であり、確実に取り組むべきと思います。

硫黄島では滑走路に足を踏み入れるほど近くで見学しました。普段はうるさい訓練としか思えない艦載機でしたが、間近でみる訓練は爆音と風圧を排出しながらも高度な技術を必要とする難しい訓練で、命がけのものだと思いました。

硫黄島には自衛隊や関係者が駐留しているだけで民間人は全く住んでおりません。訓練見学の合間に慰霊塔やすり鉢山を視察しました。熱帯独特の蒸し暑さのなか戦闘跡を見ましたが、静寂を破る爆音が時折響き時の流れを忘れるほど島は緑にあふれ安らぎを感じさせます。戦争は過去のものになりましたが、この平和を維持しているのも現実は軍事力なのです。